3年目のヨコハマ保活

3年続いた保活が2021年に終了しました。2年目からは激戦区港北に突入し、とりあえず終了しました。

閑話休題47 23区保育園入りにくい区ランキングと保育ニーズの割合

 

こういった記事はとても好きです。0歳児の定員設定を意図的に抑えている江戸川区(1歳児からの園がほとんどです。)には気の毒ですが、とても面白い指標だと思います。

ただ定員に対する比較対象を人口とするなら、持ち上がり児童をカウントしても差し支えないと思うので、全国的にもっとも厳しいと言われる1歳児で算出してもよかったのではないかと思います。

 

toyokeizai.net

 

さすがに私も町丁目ごとの最寄駅リストなどは作成していないので、港北区駅別ランキングなどはできないのですが(隣接する横浜市の他の区も集計しないとアレですし)、令和2(2020)年 町丁別の年齢別人口(住民基本台帳による) 横浜市https://www.city.yokohama.lg.jp/kohoku/kurashi/kosodate_kyoiku/hoiku/hoikujo/R4riyoushinsei.files/0015_20211008.pdfを参照すれば、誰でも町別で算出できるでしょう。なお、下記の記事の数字によると港北区は3.49倍、日吉2.71倍、日吉本町3.46倍、箕輪町は5.83倍、綱島東3.38倍、綱島西(+綱島台)2.52倍です。

 

ponpn.hatenablog.com

 

この港北区の結果と23区のランキングを見比べると区平均のランキングに意味はないと感じたと思います。が、しかし、ある意味では意味があります。

23区ランキングで港北区平均に近かった渋谷区の0歳児の保育ニーズ割合を子ども子育て支援計画から逆算した処、32.7%でした。港北区が32.2%なので思ったより差がないですね。港北区も渋谷区も0歳児人口に対して整備すべき保育園定員数を1/3程度にしか捉えていません。ですから、倍率が3倍程度になるのは当然なのです。

なお、練馬区は0歳児の推計人口が計画には書かれていなかったので保育ニーズ割合はわかりませんでした。

一方江戸川区は0歳児のニーズ割合を12.7%として計画を作成しています。だいたい1/8ですから、倍率が8倍なのは当然です。

渋谷区子ども・子育て支援事業計画 | 渋谷区公式サイト

未来を支える江戸川こどもプラン(令和2年度から令和6年度) 江戸川区ホームページ

江戸川区が0歳児の保育ニーズを12%と算出する限り、いつまでたっても江戸川区の整備状況は変わらないはずです。保育ニーズの算定は国から指示された方法である世帯類型別の住民統計と子育て世帯へのアンケート調査で決まるので、あまり恣意的に決められるようなものでもないはずです。江戸川区のニーズ割合算定事務の誠実さを信じるのであれば、仮に0歳児で保育園に入れるつもりで江戸川区に転入したとしても、受入園が少なくて困ることがあっても、ライバルは港北区に比べてレアなので、この記事で誇張されるほど入りにくくはないはずです。ただ、12.7%は1/7.87であり、現実には8.31倍でもニーズを満たしていると言うには12.0%までニーズが下がっていないといけないので、足りているわけではないのですが。

参考までに千代田区の0歳児についても算出したところ、42.0%としているようでした。計画の上では2.38倍のはずだったのですが、推計の約700人を大幅にずれて、0歳児の人口が減少しているため、倍率が減っているみたいです。

千代田区ホームページ - 千代田区子ども・子育て会議

 

コロナ禍では出生数が減ったのに加えて東京の人口が周辺県に流出しているので、都内は結構入りやすくなっているのかもしれませんね。

 

しかし、江戸川区の保育ニーズの算定を信じて良いのかについては検証が必要です。もうここまで来たので、横浜市の保活には関係ありませんが、私に可能な限り(四則演算すら怪しい)で調べてみます。

保育ニーズの算出方法は内閣府が定めています。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h260124/pdf/s9-2.pdf

千代田区江戸川区の保育ニーズはなぜ発生しているのでしょうか。

それぞれの区の調査報告は以下のとおりです。

https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/9335/30-2shiryo3.pdf

https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/14245/gaiyouban.pdf

子どもの年齢構成は千代田区は0歳児が異様な多さです。

家族構成は千代田区の方がややひとりっ子が多いですが、これによって保育ニーズがここまで違うとは思えない程度の差です。

千代田区は就労していない母が22.9%

江戸川区は同36.7%

ここではやや差がつきました。

しかし就労していない母のうち今後1年以内に就労したい層は千代田区16.1%、江戸川区22.1%でこれらの層は保育ニーズにカウントされるので、実際の差は5%ほど補正されるでしょう。

次は育休に関する質問です。

母に対する育休を取得したかの質問に対し、千代田区は取得した57.9%が1番多く、次いで働いていない21.8%、取得していない17.8%となるのに対し、江戸川区は働いていなかった43.9%がトップで、次いで取得したが41.1%、取得していないが13.2%となっています。

個人的にはこれらの結果が2つの区の性質の違いであるようにも思えます。江戸川区の方が専業主婦志向が高いように見えるのです。

因みに取得していない母のうち、取得しない理由として育児等に専念するため退職したから、を選択した割合は千代田区22.6%に対し、江戸川区44.4%でした。

 

また、育休からの復帰希望時期と実際の復帰時期に関する調査もあります。

千代田区の1歳未満で復職を希望する母の割合は17.7%でした。

江戸川区の結果は1歳未満で復帰を希望する層は全体の12.4%です。

千代田区の結果は思ったより少ない割合です。では実際の復帰時期はどうなっているのかと言うと、千代田区は回答した男女合わせて55.1%が1歳未満で復帰しています。

 

最初から見ればよかったのですが、何がどうして保育ニーズに差がついたのか、明確なことはわからなかったため、内閣府の保育ニーズ算出マニュアルを参照してどこをどう調整しているのか確認しました。

さて、マニュアルをざっくり読むと、0-2歳児の保育ニーズは、父母の就労形態別に世帯を割り振り、その中で父母が一定時間以上働いている世帯の数とそうでない世帯のうち父母ともに一年以内に一定以上働く見込み(希望含む)がありそうな世帯の全体に占める割合を年齢区分ごとに算出します。この時フルタイムと育休中のフルタイムは同じように扱われます。さらにそれらの一定以上働く(ことが見込まれる)家庭が認可園こども園の利用を希望する割合(利用意向率)も算出します。これらの割合を自治体の将来推計される年齢別の児童数に掛けたものが必要な保育の量であり、実際の利用児童数を下回れば適切に補正するものとされています。

ですから、私がニーズ割合と称したものの正体は、保育相当に労働する類型世帯の割合にそれらの世帯の保育の利用意向率を乗じたものでした。この原理に従えば、0歳児と1-2歳児のニーズ割合に差はそんなにつかないはずです。

 

しかし、0歳児には特殊補正が認められ、次のとおり記載されています。

5)留意事項
上記4)により算出された「量の見込み」に関して、基本指針案第三の三の1等を踏 まえ、育児休業後における特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業の円滑な利用の 確保に当たって、0歳と1・2歳の「量の見込み」を調整することも考えられる。
その際、例えば、以下の方法が考えられる。

・上記1)2)の対象者(0歳児)のうち、問 15-1(平日定期的に利用している教育・保育の事業)で、「3認可保育所」から「9 居宅訪問型保育」のいずれかを選 択した者のうち、問30-6(1)1において「1 希望する保育所に入るため」と 回答している者の割合(育休明けの利用意向率)を算出し、上記4)1の「家庭類 型別児童数(0歳児)」に掛け合わせる(育休明けの利用意向の児童数)
・「育休明けの利用意向の児童数」を、上記4)2の0歳児の「量の見込み(人)」か ら差し引く。
※この方法により計算をした場合に、0 歳児の「量の見込み(人)」が現在の 0 歳児の利用児童数よりも減る場合には、「育休明けの利用意向の児童数」をゼロとすることも考えられる。
※0歳児の「量の見込み(人)」から差し引いた「育休明けの利用意向の児童数」については、 特に供給不足となっている自治体においては、1(・2)歳児に係る整備量を早期に増やす ことが求められる。

わかりましたでしょうか。

私はよくわかりませんが、問30-6(1)1とやらが相当調整に幅を利かせているようです。

以下の調査票イメージから該当質問を探してみると、希望より早く復職した母に理由を聞く設問でした。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h250806/pdf/s1-5.pdf

つまり上で言っているのは利用意向のある家庭の割合から、希望園に入るために早く復職した家庭分を差っ引いて良い、ということです。

江戸川区では母のうち43%が希望より早く復職し、そのうち61.3%が希望園に入るためと回答しています。

千代田区では母のうち360/604人である59.6%が早く復職、71.7%が希望園に入るためと回答しています。

思っていたのとは真逆の結果になりました。育休を取得した割合は千代田区の方が高く、上記の状況なので、0歳児の保育ニーズを調整して低くしようとすれぼ、千代田区の方が他の年齢との極端な差をつけられそうな気がします。

上記の記述どおりに算定しているとすれば、千代田区は0歳児保育が既に幅広く利用されているので、実際の利用人数を下回る調整はできず、調整幅が少なくなっているのでしょう。

そして江戸川区は実際の利用人数が少ないので、調整可能な幅を活用できるため、活用しているということが考えられます。

内閣府のQAにはさらに怪しい記述をみつけました。0歳を別枠で算定する理由が以下のように書かれています。

子ども・子育て支援法では、認定区分ごとに「量の見込み」と「確保方策」を定めることとされて います。 基本指針では、こうした法律の枠組みを前提として、0歳児については、0歳児保育の政策的位置づけにより必要量が大きく変わることから、特に満1・2歳と区分して、「量の見込み」、「確 保方策」を記載することとしたものです。

そしてさらに今までの全てを台無しにする説明も見つかりました。

第一期手引き」は、国が示した「調査票のイメージを使用した標準的な算出方法」であるため、各市町村において独自の算出方法を用いることも可能です。ただし、その際も潜在的な利用ニーズについても考慮するなど、量の見込みの算出の基本的な考え方を踏まえたものとする必要があります。また、「極端に現実的ではない数字」の場合、その原因を分析の上、地方版子ども・子育て会議等の議論を経て補正することも可能です。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h310218/pdf/2_s7-4.pdf

 

ここまででわかったことをまとめると、江戸川区には専業主婦志向のような意識があるものの0歳児のニーズ割合が低いのは、専ら政策判断によるニーズ算出方式の違いやこれまで定員を設定してこなかった既存の状況によるもので説明できるのであって、個々人意識はあまり関係ない可能性も高いということです。

 

江戸川区民が私の雑な結論を見てどう思うかはさておき、横浜市民であればじゃあ横浜市のニーズ割合や調査結果はどんな感じなのかという感想を持つかと思います。

横浜市の現行の計画では、ニーズ割合は0歳児と1-2歳児でそれなりに差がつけられています。

が、港北区等の市内北部の区は、23区のランキングと比較して想像がつくとおり、結果としてはそこまで極端な割合が算出されているわけではありません。

しかし区ごとにかなり差異があり、最も低い瀬谷区では21.9%と算出されているため、特に激戦区との噂がなくても0歳人口ベースでは箕輪町と同じ5倍程度になることも考えられますので、気になる方は計画pdfの150ページ目あたりから見てみると良いでしょう。

また、12/3に開催された子ども・子育て会議(総会)ではこのニーズ量である量の見込みが保育の確保策の中間見直しと共に議題にあがっており、根拠のない推測では人口推計のずれを直したり、ニーズ割合を見直す可能性もあるのではないかと総会資料の公表を待っているところです。

「横浜市子ども・子育て支援事業計画」~子ども、みんなが主役!よこはま わくわくプラン~ 横浜市

ニーズ調査の結果についてですが、こちらは下記に市全体の結果がまとめられています。

https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/org/kodomo/sonota/shingikai/kosodate/newplan.files/0045_20190318.pdf

就労していない母の割合は40.3%であり、江戸川区より断然多い状況です。

そして母の育児休業取得について最も多い回答は取得した47.3%、次いで働いていなかった38.6%、取得していない12.6%でした。

取得していない理由として育児等に専念のため退職を挙げたのは54.5%でした。

1歳未満での復職を希望する母の割合は江戸川区の半分程度の6.2%、実際に1歳未満で復職したのは34%です。希望より早く復帰した母が67.7%で理由が希望園に入るためがうち70.3%でした。

一方でマニュアルどおりのニーズ割合構成値の一つである利用意向率のアンケート回答者全体の結果を年齢別に集計した表が掲載されていますが、ニーズ割合とは裏腹に0歳児の保護者が、もっとも認可保育所こども園を利用したがっているという結果が掲載されていました。

江戸川区はかなり極端ですが、横浜市もやろうと思えば0歳児の保育ニーズなど、あまりないかのように数字をいじれるポテンシャルは秘めているように思います。(ただし、現行利用者分は算定することが国から強めに求められている。ようにも思えますが)

 

なお、横浜市だけの話ではないですが、保育ニーズについて、公表されている結果から内閣府マニュアルに基づいた割合を算出するには十分なデータが公表されていないような気がします(ただし、横浜市の会議の議事録まではチェックしきれていないので、どこかで説明があるのかもしれませんが)。

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